「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第4回目 久保 茜さん GARUTSU株式会社 ブランディングディレクター

「白神山地での醸造は挑戦 ここは私のスタート地点」


Q現在のお仕事を始めるきっかけは?


きっかけとしては、ワイナリーの立ち上げがあるから一緒にどうだ?と誘われたことですね。ここに来る前は神奈川県で全く違う仕事をしていて、お酒に関わる仕事の経験はゼロでした。一緒に働くスタッフは皆大体2019年1月ころに来ていて、飲食店をやっていた方や元寿司職人が醸造家になっています。皆が1からのスタートなので誰かが答えを持っている訳では無く、全員手探りの状態でやっています。ボトルラベルのデザインとかお店の雰囲気づくりとかも全員で意見を出し合っています。


Q全員が1からのスタートってワクワクしますね!久保さん自身は白神山地と何か繋がりが?


うまくは伝えられないのですが、私にとってはすごく御縁のある場所だと思っています。 学生時代、自分たちで団体を立ち上げて子供向けのキャンプ事業をやっていたのですが、事業を実現する為に色んな方にお力を借りて、その過程の中で色んな人に可愛がっていただいたんですね。その場所がまさに白神山地だったんです。私は当時の経験があって自分の人生がすごく豊かになったと思っているので、そのことを形を変えながら色んな方に伝えていきたいと思っています。

ここが私にとってはスタートの場所だったので、ここが大事。もし学生時代の活動場所が白神じゃなくて違う所だったら今いる場所はまた違っていたかもしれないですね。


Qここは、学生時代のご縁で結ばれた大切な場所なんですね。白神山地への想いは商品づくりにも影響していますか?


白神山地という場所は縄文時代から人と自然が共存し守り受け継がれてきた場所ですから、私たちもこれからの世代の人たちにここを受け継いでいきたい、という思いを商品に込めています。

そこからこの場所で作る商品として何が魅力になるのだろうと考えた結果、白神酵母を使ったワインやシードル作りに挑戦することを決めました。

シードルの材料は、白神近郊のりんごだけを使っています。シャンパン酵母を使うと2、3週間で発酵が始まるのですが、ここで使っているブナの酵母はすごくゆっくり発酵していくので、大体6週間で完成になります。弘前大学が研究している白神酵母の何百種類もあるうちからブナの酵母を選び、その中でもさらに数種類に分かれた中からみんなで納得する味になるものを選びました。


Q1本のシードルに、みなさんの想いが詰まっているのですね!ボトルラベルも素敵ですが、これにも秘密が?


現在は様々な酵母を使ったお酒を取り扱っておりますが、そのほとんどの商品のボトルラベルを自分たちでデザインしています。商品を手に取るお客さんがどう思うか、という視点を大事にしながら私たちの描くストーリーをラベルで表現しています。


Qラベルにも愛情がこもっているんです、すごい!最後にこの地で働く想いをお聞かせください。


商品開発の中で私が大事にしていることは県外者目線です。私は群馬育ちなので、青森の方々が当たり前に思っていることが私にとっては当たり前では無いんです。こんなにりんごに品種がある事を県外の人はまず知らないですし、りんごを買わずにもらえる環境ということも私にとっては新鮮です。そういった地元の方の当たり前を県外出身者だからこそ強みとしてとらえることができ、それを商品開発やブランディングに生かしています。なので県外者目線は自分の中では大事にし、そこは青森に染まったらいけないと思っているので惜しまず出して客観的というか部外者目線でいるのが発展していくうえで大切だと思っています。みんなの当たり前が実はすごい事なんだよと伝えていきたい。


―たしかにお店のあちこちにフレッシュな久保さんカラーが見える気がします。これからも白神山地に新しい風を吹かせてください。



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 川島昌子  撮影/小田桐啓太)