「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第6回目 斉藤 桃子さん 青い森の白い神の花工房 代表

「ガラスの欠片に故郷の希望を託して」


Q印象的なネーミングの工房ですね。始めに工房のことを教えてください。


砂浜に流れついたガラスの欠片を「シーグラス」と呼びます。私たちはそれを溶かして成形し、アクセサリーに仕上げています。メンバーは現在だと10~20代の女の子で、10人くらいです。深浦町出身の子が中心になって工房を引っ張ていますが、中には首都圏出身の子もいます。私は代表として、制作もSNSの更新も全部やっています。


Qパーツとなるシーグラスは、ご自分たちで拾うのですか?


そうです。シーグラスを拾うのは、地元の子供たちの楽しみの一つだったんですよね。集めたものは女の子たちの宝物だったと思う。それを生まれ変わらせて地元の魅力、子供たちの希望とかを全国に届けられたらなって。シーグラスは地元の子供たちが夢を持って拾い集めた欠片だから。また、縁があって沖縄の琉球ガラスを扱っている窯元さんから捨てるはずだったものから欠片をいくつか頂いたので、それらも素材にしています。シーグラスの青や茶色、緑で森や海を、琉球ガラスの赤やピンクで花などを表現して、着けるたびに町の事、白神山地の事を思い出して欲しいなと。」


Q故郷への想いが詰まった作品なんですね。でも、どうしてアクセサリーを作ろうと?


アクセサリー作りは女子だからこそできる表現だと思う。なので、このアクセサリー制作の事業が発展して女性が活躍できる場となれば、人口減少を止めることができるんじゃないかと。限界集落でどんどん子供も減っていく中で、何かをやらないと、というのはすごく思っています。


Qなるほど。女性が活躍する場を目指しているんですね!地元を大切にしている思いが伝わってきますが、この地の自然に思い入れは?


故郷のこの環境が好き。森から離れて暮らす自分は想像できないですね。山菜やキノコを採りに行く父親にいつも連れられていたので、小さい頃から自然に親しみがありました。でも、昔は白神山地って何?と聞かれたら『山』としか答えられなかった。世界遺産だからどうというイメージは無くて、地元の山って感じで。自分の意思で白神の山を知ろうと思ったのは高校生の時。故郷の事を知ろうという授業の中で、地元・いわさき小学校の児童と一緒に十二湖に生息する動物を写真で記録しているご夫婦に出会ったことで、白神の生態系に興味を持ちました。そのご夫婦とは卒業してからも活動を共にしています。高校時代はボランティア活動で海岸の清掃活動にも取り組みました。海を綺麗にすることで白神の自然を守ることに繋がるかなと。森があって海、海があっての森。森と海は一緒だと思うので。


Q高校時代のご経験が、今に活きているのですね。最後に工房の今後の展望をお聞かせください。


全国展開、とはまだ言えないですね。まずは地元・深浦町のお店を中心に少しずつ私たちの作品を置いてくれるところを見つけて行きたい。一歩ずつ着実に進んでいくのが目標です。


―桃子さんらしい誠実な目標ですね。地元の将来を担う一人として、これからも突き進んでください。



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 山本昌子  撮影/福士写真事務所)