「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第10回目 三上 富蔵さん 白神観光バス有限会社 代表取締役

「白神山地にお客様の笑顔を運んで22年!」


未舗装道路の白神ライン(県道28号)をバスで横断できるなんて、素敵じゃないですか?ユニークなバスツアーを数々と生み出した白神観光バス有限会社の代表取締役であり運転士も勤める三上さんに白神山地が世界遺産登録されたころの様子や白神ラインを走った思い出をお聞きしました。


Q.会社創立当時の様子を教えてください。


平成11年に旅行会社を作って、今年で22年になります。旅行会社と一緒にバス会社も始めました。従業員は8人、運転手が6人、事務員が2人、その中に水陸両用バスの運転手もいます。白神山地が遺産登録された当時はとにかく賑やかだった。暗門の滝やブナ林を見に来る団体客だらけでアクアグリーンビレッジANMONの駐車場はいつも大型バスでいっぱいだった。そんな状態だったから、私たちは白神山地にお客様がたくさん来ると思って青森駅出発の「白神ラインツアー」という企画を組んで新聞に載せた。1番最初に70名限定の無料モニターツアーをやったら1日で予約がいっぱいになってしまったのには驚きました。


Q.遺産登録当時の白神山地はとっても賑やかだったんですね。「白神ラインツアー」のことをもう少し教えてください。


白神ラインを走ると津軽峠から先の見晴らしがいいな。良い木もあるし、川も綺麗。赤石川のほうに下りてトイレの所を上がって行くとカツラの大木があって良い所だよね。天狗岳展望所に行けばまた景色が素晴らしい。

あの砂利道でも走っているとお客様は気持ちいいのか寝ている人が結構いる。抜けるのに3時間かかるから長いし寝ちゃうよね。バスガイドは付けずにお弁当を持って赤石川の次の追良瀬川の橋の所の川原でバスから降りて、30分位みんなでご飯を食べる。その後また出発してサンタランド(現アオーネ白神十二湖)に到着する。ウェスパ椿山(2020年廃業)や鯵ヶ沢町の道の駅に寄って青森駅まで帰るんだ。その他も結構貸し切りでバスの予約が入ってお客様が行きたいという所に連れて行った。こういうツアーのおかげで売り上げもかなり上がりました。


Q.砂利道をバスで3時間行くなんてなかなかできない体験ですよね!「白神ラインツアー」を行った中で印象に残っているエピソードはありますか?


白神ラインの砂利道で今までパンクや車が故障した事は無い。ただ、土砂崩れで進めなくてUターンして戻ってきた事は2回位あったかな。

この仕事をしてきた中で一生忘れない事があります。それはお客様を深浦町に降ろし、会社へと戻る夕方の帰り道のこと。いつもは国道101号線を通るけれど、その日は岩崎から、兼ねてより興味があった夜の白神ライン※を通って帰ることにしました。道が林の中に入る頃、辺りに夕陽が強く差し込んできて目の前の山々がまるで真っ赤に染まっていくようでした。あの時の夕陽が凄かった。もう、綺麗で綺麗で・・・真っ赤な山あいをバスで進みながら見たあの景色が一生忘れられません。

それから、東京から来たお客様をバスに乗せて白神ラインを走っていたら道路の真ん中に蛇が「ドンッ」と構えていました。風呂敷の唐草模様のような蛇で全然逃げないのです。「お客さん、お客さん」と寝ているお客様を起こして道路に蛇がいるよと伝えたら、そのお客様が「これはマムシだよ!!」と言うものだから「マムシを見た事があるのか」と聞いたら「見た事は無いけどこれは絶対マムシだ」って大慌て。そんな話も今では懐かしいですね。


Q.夕陽で真っ赤に染まる白神の山、見てみたいなぁ。最後にこれまでのお仕事経験を振り返った感想をお願いいたします。


これまでバスツアーは日帰り、宿泊色んなツアーを考えました。かまくらを見に行くツアーなのに雪が無いなんてこともあったし、気仙沼のヤマツツジを見に行くツアーでは冷害で何も咲いていないこともありました。その時はあまりにも申し訳ないから帰りに岩手の釜石の観音様やら色々見せて帰ったけどね。自然を見せに行くのは思い通りに行かないことも多くてとても大変でした。だけどそこが面白かったし、楽しんでやっていました。いいお客様に恵まれて本当に幸せな人生です。


―ありがとうございました。これからも白神山地にたくさんの笑顔を運んでくださいね!



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 山本昌子  撮影/小田桐啓太)