「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第17回目 太田 正光さん  白神山美水館

「ブナの森から湧き出た水をミネラルウォーターに」


──正真正銘、白神の森から湧き出る水だった


阪神淡路大震災が起きてから世のなかにミネラルウォーターの需要が高まり、その時流に乗るようにして平成7年に白神山美水館を設立しました。ミネラルウォーターの販売を開始したのは平成8年4月のことです。元々は木材の伐採や搬出など、山仕事を扱う会社でした。

販売している水の水源地は地元鯵ヶ沢町の然ヶ岳の麓の国有林の中にあります。 水源地は世界遺産地域ではありませんが、ブナの森から湧き出た水ということは間違いないです。かつてはニジマスの養殖に使っていた水で、ニジマスは水質のいい環境でないと生育できないから、ここの水はそれだけ綺麗な水だったと言えますね。

採水地の麓には水量豊富で流れの清らかな赤石川があります。この赤石川で捕れる鮎は魚体が金色に輝いて見える事から「金鮎」と呼ばれ、全国的にも知られています。 しかし昔の赤石川の鮎の量は凄かったなぁ。私自身も子供の頃は毎日のようにこの川で遊び、魚釣りをした事を思い出します。


水源地から採水した水は、必要な分だけトラックで工場まで運んできています。後は自然に川に流しています。採水場までの道路は狭くて大きなトラックは入って行けないので、3.5tのトラックを一日に数回往復して運びます。ここが苦労している点ですね。

そうして運んできた水をできる限り自然の状態のまま飲んでいただきたくて、フィルターろ過のみで殺菌する製法を採用しています。熱を加えると水は死んでしまいますからね。 硬度は0.2mg/Lの超軟水で、「のどごしがいい」と言っていただいています。夏場も冷蔵庫に入れなくても自然に飲めるのが特徴です。

お酒を割ってもいいし、薬を飲むのにもいいし、赤ちゃんでもそのまま飲めるので家族みんなの飲み水に使えます。 お客さまはリピーターの方が多く、一度口にすれば長く飲み続けてくれています。全国の方の飲み水として白神山地の水を選んでいただけることは嬉しいことです。


──水を守るために山を守る


過去20年間は枯れることも無く安定して販売供給できています。 水源地は何十年も何百年も出てきたところでしょうね。ただしこれから大きな地震や山が変わるくらいの環境の変化が起こればわからないですよね。

そうならない為にも、白神の山を守っていこうと思っています。水というのは我々人間の生活に欠かせないものでしょう。この森の水源涵養林の役割は物凄く大きいんですよ。


──私のふるさと、白神山地


白神山地が世界遺産に指定されたことで、地元の水を「世界遺産」の水としてブランド化することができ、そういった面では世界遺産の恩恵を受けたと言えます。 しかし、遺産登録して間もないころは、これまで入れていた山に入れなくなってしまったことなどに様々な意見が飛び交いましたよね。

里山で暮らしてきた地元の人間は、シーズンになれば山菜やキノコを採りに山に入ることは日常的でした。 その場所に簡単に入って行けなくなってしまったことを残念に思っていた時期もありましたが、登録から30年経った今では過ぎし日の思いですね。 これからはインフラや施設を充実し、観光客をお迎えできる態勢を整えて、賑やかな白神山地になるといいと思っています。


取材後記
一口飲んだ瞬間「美味しい」と言葉が出ました。無味無臭な水なのにそう感じるのは白神山地の大自然と、それを大切に製品づくりを続ける生産者の思いがあってこそでしょう。沢山の方にこの水を飲んで欲しいと思いました。

同社で経営しているカフェ「水とコーヒー」ではこの水を使ったコーヒーを飲むことができます。超軟水はコーヒーをまろやかに抽出してくれるそう。コチラもとってもオススメです!


(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 山本昌子  撮影/小田桐啓太)