「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第2回目 板谷 正勝さん 十二湖森の会 顧問

「十二湖の仙人に聞く」


Q.板谷さんが幼い時この辺りはどんな場所でしたか?

サンタランド(現アオーネ白神十二湖)の施設ができるまで、この辺りにはおら達の田んぼが広がっていたんだ。田んぼの奥にはジャングルのように鬱蒼とした森が続いていた。今でこそ立派な道路があるけれども、青池のあたりまで行くのは本当に大変だったんだ。森の中にはたくさんのクマがいたよ。いわゆる「クマの巣」といった感じだな。


Q.今とはまるで違った景色だったようで驚きました。クマがたくさん居たようですが、狩猟もしていましたか?

クマを撃ちに行くのは珍しい事ではなかったんだよ。生活のために獲って、毛皮も肉も余さず大切に頂いた。誰かが獲ればお祭りみたいにお祝いしたんだ。岩崎村だけでも5、60人は猟をする人がいたな。今では5、6人くらいまで減ってしまったけれど。


Q.クマを獲ることも生活の一部だったのですね。板谷さんはクマに立ち向かうの、怖くなかったですか?

いやいや、おっかながっていれば獲れないよ。それに先輩方に毎回「逃がすな!」って怒られるもんだからそっちの方が怖かったよ。


Q.勇敢に立ち向かっていたのですね。カッコいい!ところで板谷さんは山だけではなく、海でも漁をすると聞きましたが、今でも続けているんですか?

今日も午前中サザエを獲りに行ってきたよ。浜には私の番屋があって船もしまってある。ハタハタが最盛期になれば、選別する人とかが30人くらい番屋に集まるんだ。


Q.凄くにぎやかになるのですね。海も山も楽しめて、板谷さんの故郷はいい環境ですね。

おらのとこが一番いい所なんだ。他の町にも遊びに行くけど・・・深浦町(旧岩崎村)が一番だ。ハハハ。


Q.故郷が大好きな気持ちが伝わってきます。それでは、故郷の山である白神山地とは板谷さんにとってどんな場所ですか?

白神山地は宝の山。食べ物は豊かだしいい景色もいっぱいあるし。だからおら達はいろいろなものを追いかけて山に入った。十二湖だって、観光客の人は青池だけを見て帰っていく人が多いけど、他にも見どころはたくさんあるんだよ。山の歩き方はまだまだいっぱいあるんだ。


―山の恵み、海の恵み、どちらも貴重な生活の糧ですよね。そのどちらもが豊富に在り続ける白神山地はまさに宝の山ですね!板谷さんのお話しから、白神山地がこの地で暮らす人々にとってなくてはならない大切な場所である事を理解しました。今度は板谷さん流の十二湖の歩き方を教えてくださいね。



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 川島昌子  撮影/小田桐啓太)