「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第22回目 入野谷 千代子さん  ガイド

「“伝える”を丁寧に」


Q.山と川、それぞれガイドを始めた経緯は?


私が現在ガイドとして活動することになったきっかけは、白神山地での出会いにあります。 白神山地を源流とする岩木川で水辺のアクティビティ業を経営する「カヌーとラフティングのA‘GROVE」とは大学四年次にレースラフティングの練習をしていた時に出会い、ツアーやイベントを手伝わせていただくようになりました。

「選手時代の経験を活かして西目屋村でカヌーやラフティングを盛り上げたい」という気持ちで就職を迷っていた私に、「うちでやってみないか」とA‘GROVEの代表が声を掛けてくださり、大学卒業後まずは地域おこし協力隊としてA‘GROVEに所属しました。現在もフリーのラフティングガイドを続けています。

一方、西目屋村で過ごしているうちに、在学中から親交があり「白神マタギ舎」のガイドでもある弘前大学探検部出身の先輩と一緒に白神山地の山歩きも楽しむようになりました。

先輩から白神の山を教わり、また白神マタギ舎の理念である「白神山地の自然環境やマタギ文化を未来に伝える」という思いを聞いたことで 、それまで遊び場として親しんできた白神山地に対し意識が変わった。知れば知るほど白神山地に魅了されていき、同会のガイドになることを決意したのです。


Q.ガイドを始めてどんなことを感じましたか?


ガイド業を始める前は、毎日変わらないルートを日々良いパフォーマンスでこなしていけるものだと想像していました。 しかし、実際にお客様と接すると、求められることがその時その時で全く違うんですよね。 ですから仕事に慣れるという感覚は無く、毎日が新鮮で日々勉強です。


Q.ガイドをする上で大切にしていることはなんですか?


ラフティングも山のガイドも共通して、お客さま一人一人の顔を見る事です。 元々水辺が好きで参加している方もいれば、仲間に誘われたからなんとなく参加したけど水に苦手意識を持っているようなお客様もいます。 個々の許容範囲の中でツアーを最大限楽しんでいただくには私たちガイドとの信頼関係が必要だと思うので、お客様の安心感を高めるような接客を心がけています。

山の場合も同じで、体力もそれぞれですし、植物を見るのが好きな人、マタギ文化の話を聞きたい人など様々です。興味のある方向に合わせた話ができるように多くの知識を身につける努力をしています。


Q.どのようなガイドになりたいですか?


キャラクター性でファン作りをするタイプではないので、とにかく白神山地を「伝えられる」ガイドを目指しています。 目の前にある植物や景色のことを説明するのはもちろんですが、それだけではなく、過去の人々の暮らしがあるから今の自然環境に繋がっていることなど目には見えないストーリーを伝えられるガイドが理想像です。


Q.白神山地のいいところを教えてください。


白神山地の奥の方まで行って気づいたことは、手前の山でも変わらず綺麗だと言うこと。 奥まで行けば地形の違いや動物の気配が濃くなることで自然の豊かさをより感じますが、森の美しさでいうと、どこでも同じく素晴らしい景色を見ることができます。 手軽なコースにも白神の魅力は詰まっているので、まずは「世界遺産の径ブナ林散策道」や「高倉森自然観察歩道」などを楽しんでもらえれば。


Q.これからの白神山地はどんな場所になってほしいと考えますか?


色々なことを考えるきっかけの場になってほしい。 観光で訪れた方も、自分の生活に戻ったあとで、「白神ではいろんな植物を見たけど身近な地域にはこんな植物があるんだ」とか「自然を保つために自分はどんな生活をしよう」とか、自然環境を考えるきっかけになれば嬉しいです。



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 山本昌子  撮影/小田桐啓太)