「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第23回目 虎澤 裕大さん  西目屋薪エネルギー株式会社 代表取締役

「森林豊かな村に根差すバイオマスエネルギー」


Q.西目屋村のバイオマスエネルギー事業に携わった経緯を教えてください。


2014年に西目屋村から地元の森林を使った事業に取り組みたいと相談を受けました。 出発点は「地元の森林を村の中で循環させることが出来たらいいよね」という西目屋村の方々の声で、 私が役員を務める(株)森のエネルギー研究所で調査と村民の方々へのヒアリングを行いました。 大部分が林野であり、古くから農業や炭づくりが盛んだった西目屋村は現在に至るまで薪に馴染みを持ってきた地域であるということから、薪を活用した木質バイオマス資源として、エネルギーの地産地消の事業化を策定しました。


西目屋薪エネルギー株式会社の設立に先立って2017年の4月にはグリーンパークもりのいずみの温泉施設に薪ボイラーを導入、次の年には薪がエネルギー源の融雪設備を導入した「子育て定住エコタウン」が整備されました。 エコタウンの構想段階で薪エネルギー活用システムに関して、個人宅向けの熱供給などの提案をしたのですが、結果としては道路全面の融雪を担うことに。 決定した時には人生で初めて「どひゃー」と声がでましたね。えらい事になったぞと。 現在もトライアルを繰り返し、住民のみなさんの暮らしのサポートになるよう努力しています。


Q.元々はエネルギーコンサルタントのお仕事をされていたようですが、なぜ会社を起こしたのですか?


「コンサルタントの仕事だけではどこか物足りないな」と感じ始めたタイミングで調査業務のために携わっていた西目屋村にチャンスを見出し、会社を起こす決意をしました。 自分の力でチャレンジしてみたいという思いもありますし、実践的な経験がコンサルタント業務にも活かせるとも思いました。


Q.西目屋村で働いてみてどんなことを感じましたか?


会社を作って代表になるというのは初めてのことでしたので不安はありましたね。 さらに地元の方を雇用しているので津軽弁の聞き取りにも苦労しました。電話でのやり取りなんか、何を言っているのか全然わからなかった。(笑)聞き間違いの無いようにコミュニケーションの方法を文書のやり取りに変えるなどしていました。

西目屋村には月に2度ほど来る生活を続けていますが、西目屋村の自然や風景には魅力を感じますね。どちらかと言えば都会っ子の自分ですが、車があればスーパーやコンビニにも行けるし不便は感じないかな。 適度に田舎、適度に何もない感じがリラックスできるし、仕事はしやすい環境だなと感じています。


Q.西目屋村への供給以外でも薪は利用されていますか?


個人向け薪ブランド「メヤマキ」を展開しています。 2年程前からスタートし、インターネットを介して全国販売しています。 薪を製造販売する事業者は多くありますが、差別化を考えたうえで「メヤマキ」はアウトドア層をターゲットにしています。近年のアウトドアブームの影響もあって少しずつ認知が高まってきました。

白神山地の周辺で息づいてきた森の木を薪にして、焚き火にする。そういうところに意味を感じていただければと思っています。 キャンプ用として購入されるユーザーさんが多いのですが、中にはインターネット検索からたどり着き、薪ストーブ用にと購入していかれた方もおりました。


Q.「白神山地×アウトドア」構想はありますか?


当社で言えば、メヤマキのブランドの価値は白神山地によって高められています。 世界遺産というブランドはやはりどの分野においても価値がありますよね。「白神山地でキャンプをする」っていうイメージが良い。

森の中でテントサウナをするとか、飽きさせない要素は色々作れると思っています。現在のキャンプブームを追い風に発展してほしい分野であります。


Q.これからの白神山地はどんな場所になってほしいですか?


もっと多くの人が能動的に楽しめるような場所になってほしいですね。 少し歩いて終わりではなく、複数のアクティビティを体験できる滞在型の観光が発展してほしいと思います。選択肢を増やしてあげて、「白神山地を遊び倒す」という人が増えたらいいですね。



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 山本昌子  撮影/小田桐啓太)