「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第24回目 秋穂 享子さん  そばいろ茶屋

「十二湖のほとりで“ほっと”くつろぐ」


Q.開店までの経緯を教えてください。


30歳になったら地元に戻ると決めて、高校を卒業後進学のために上京。 東京では保育園で働いていましたが、地元に戻ったら「会社に勤めるのではなく自分で何かしたい」と思い飲食店の開業を考えました。深浦町に店を出すなら田舎に行った時に食べたくなるものを提供する店が合うな、とか、地元の美味しい水を活かした蕎麦を作れたらなと思うようになり、東京の蕎麦屋で経験を積みました。

その後Uターンしてすぐ物件探しに取り掛かりましたが、深浦町には空き店舗がほぼ無かったため空き家を見つけては近所の人に聞きこむしか無く、苦労しました。そして出会ったのがこの物件です。景色の良さがまず気に入りました。

元々は旅館だったこともあり一人で切り盛りするには大きすぎるかな、とも思いましたが、色々な可能性を感じてここにしようと決めました。 やってみたいことの一つにDIYがあったので、近所の方に手伝ってもらいながらですが内装も自分で手掛けています。


Q.開店してから現在まで心境の変化はありますか?


能天気な性格なので開店準備をしている時は深く考えずに、楽しいことだけ思い浮かべていましたね。 どれだけやれるか分からないけど、少しでも地元が盛り上がるきっかけになればいいと思っていました。 経営計画を立てている最中は現実を目の前にして弱気になることもありましたが、周囲の方々から「強気でいかなきゃいけないよ」とアドバイスをいただいて気を持ち直しました。

おかげさまで開店後はお蕎麦を食べに来てくれる多くのお客さまで賑わいました。だけどその反面、お客さま一人一人にもっとのんびりくつろぐ時間を過ごして欲しいとも思いました。 思った以上にバタバタしてしまい、お客さまとお話しする時間もない程だったので。 もう少しで開店から一年が経ちますが、お店はまだまだ未完成。 自分にとってもお客さまにとっても心地良い空間を目指して少しずつお店作りを進めています。


Q.どんな方にお店へ訪れてほしいですか?


メインは観光客です。観光で訪れた方にゆったりくつろぐ時間を過ごして欲しいです。


Q.看板メニューやお料理へのこだわりを教えて下さい。


看板は白神の水を使った手打ち蕎麦ですね。贔屓目に見ても、地元の水は美味しいと思っています。蕎麦は気候が近い地域で採れたものが口に合うと感じるので、秋田県二ツ井産と青森県十和田産を合わせて使っています。


Q.今後の抱負をお聞かせください


若い世代の人が交流できるようなお店を作っていくのが目標です。声をかけたくなるようなお店にしたい。若い人たちが何か楽しいことをする場所にこのお店を使ってほしいです。


Q.白神山地についてどんなイメージをお持ちですか?


「神」という漢字が入っているから、神様が住んでいるんだろうなぁという感じがする。 小中学校の頃から授業で十二湖の近くに来ていたので、白神山地の自然が好きです。「どうやったらここに関わる仕事ができるんだろう」と考えた時期もあったけど、その時は誰にも聞かなかったから関わり方がわからなかった。知っていたら山を守る仕事に就いていたかもしれませんね。今でも白神山地に関わりたいという気持ちがあるからここに飲食店を開くことを選びました。


Q.これからの白神山地はどんな場所になってほしいと考えますか?


この自然が荒らされることなく、守られる場所になってほしいと思っています。ゴミやマナーの悪さで自然に負荷がかかるのは悲しい。世界のみんなで守る山だから。 忙しなく青池を見て帰るのではなく、私のお店も含めて白神山地の中でゆっくりと過ごしてもらえればこの場所の価値に気づいてもらえると思っています。



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 山本昌子  撮影/小田桐啓太)