「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第35回目 吉田 一仁さん  深浦町役場観光課

「大好きなプロレスで町おこし!!」

──プロレスに人生を捧げる


吉田さんが初めてプロレスに出会ったのは保育園の頃。小さい頃の吉田さんの目には仮面ライダーやウルトラマンと同じように、アントニオ猪木がヒーローとして映ります。

中学生で一度プロレスラーを志すものの、「身長も低く運動神経もそれほど良くない。無理だろう」と、マイナス思考が先に立ち、周囲と同じように高校へ進学することに。

進学先の高校にはレスリング部があると知り、プロレス好きな吉田さんは迷わず入部。「2年先輩にはオリンピックメダリストの赤石光生さんの弟がいました。めちゃくちゃ強かったですね。」日本一を宿命づけられている先輩の背中を追って練習にのめり込むうちに、今まで以上にプロレスへの情熱も湧き上がります。

しかし、「君はプロレスラーになりたいと思わないのか?」と聞かれると、返事はいつも後ろ向きの言葉。情熱はあるものの、ついプロレスラーを諦めるための条件ばかり考えてしまったそう。 その後も「どうせ無理だろう」と言葉にしつつ、心の中にはずっとプロレスラーへの憧れを抱き続けて社会人に。忙しく働きながらも総合格闘技のチームを作り、練習を続けます。

「高校時代は強い選手ではなかったが、いい成績を修められなかった分憧れを持ち続けてプロレスに必死でしがみついたのですね。」 一緒に練習していた仲間たちがどんどんプロの格闘家としてデビューしていく姿を見て、「自分もプロレスラーになりたい」と、ついに自分の本音を口に。

半年後、深浦町でプロレスの巡業がやってくることに。試合前の公開練習くらいなら参加できるかな、と思っていた矢先、「試合最後のバトルロイヤルに出場してみろよ」と誘われたそう。あれよあれよと初めて公式戦のリングに上がることに。

その後岩手県九戸村の試合で正式にプロレスラーとしてデビューすることが決まります。状況に気持ちが伴わず弱気になるも、歳月人を待たず、「いいからやれ!」と周囲に叱咤され、ついに深浦町から公務員レスラーが誕生しました。

言葉にすれば実現する。言霊の力を信じさせてくれるエピソードです。


──プロレスから学んだこと


プロレスの経験は現在のお仕事にも活かされているそうで、「初めて見る人にも理解してらえるような技の見せ方や体の使い方を特訓していたら、その意識が仕事面にも向いてきました。伝わりやすそうな言葉を選ぶようにしたり、分かりやすい書類作りを心がけるようになりました。それに「プロレスをやっている吉田」と人に名前を覚えていただくきっかけにもなりました。」とのこと。

そう考えるようになったきっかけは、プロレスでお世話になっている方から受けた「知っている人たちの前で盛り上がるのは当たり前。知らない人を盛り上げてこそプロなんだよ」という言葉に感銘を受けたからだそう。「以前は仕事とプロレスは一切交わることはないと思っていたんです。仕事で培ってきたノウハウをプロレス団体の運営に活かすことはあっても、プロレスの経験は仕事に活かせないと思っていました。」しかし、気がつけばプロレスと仕事はしっかり交わっていました。


──白神山地の蒼い悪魔


「子どもの頃に目元がメッシュで髪が出ている覆面レスラーの姿に衝撃を受けたんですね。覆面レスラーはプロレスファンの憧れです。」 白神蒼魔のマスクの特徴は、「昔の副町長が「深浦町のイメージカラーは青」と言っていたことを思い出し、白神山地の山を遠くから見ると青く見える事や十二湖の青池があることからメインカラーは青、深浦町から見える、燃えるような夕陽の赤を差し色に加えました。色同士喧嘩した方がインパクトがあると思うのであえてこのカラーリングにしました。」とのこと。趣味で覆面を作っているメンバーにコンセプトを伝えて作ってもらったそうです。


「リングでは「白神山地の蒼い悪魔!」とコールしてもらうのですが、ある時違うコールが聞こえてきました。試合の後、どうして間違ったの?と聞いたら『だって吉田さん、悪役の割に悪い事しないから悪魔と思えなかった』と言われてしまった」と苦笑い。 確かに戦う姿にもどこか優しさが滲みでているような。白神蒼魔はヒールになり切れない、優しい悪魔です。 得意技は「崩山ボディプレス」と「世界遺産固め」、白神山地のニューヒーローの今後の活躍に目が離せません!



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 山本昌子  撮影/小田桐啓太)