「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第26回目 神林 友広さん  白神倶楽部 事務局長

「“Science”で森を見る」


Q.白神倶楽部の活動について教えてください。


私にとって白神山地といえば「白神岳」のことを指します。 岩崎地区に住んでいる人はそう思っている人がほとんどじゃないかな。 「白神岳を守るのが私たち地元の人間の使命」という思いから、白神俱楽部では登山道の草刈りや避難小屋の掃除をしています。 汗をかきながら草刈りをしている時にかけていただく登山者の皆さんからのお礼の言葉が一番嬉しいですね。


Q.研究者、指導者、色々な顔を持っているとお聞きしたのですが・・・


研究室の先輩だった齋藤宗勝先生から「白神山地のブナ林モニタリングをすることになったから手伝ってほしい」と声を掛けられ、平成9年に環境庁が始めたモニタリング調査のメンバーに加わりました。 そこで出会った当時の中心メンバーの調査スキルと気概には感動しました。 自然度の高い核心地域の中での作業なので1mm単位の精度が突き詰められるような環境ではないのですが、そんな中でも正確性を維持する姿勢、精度に対する絶妙なさじ加減にガツンと心を揺さぶられました。 長年継続してこられたのは、そうした仲間があってのことでしょう。

平成17年からは地元岩崎中学校の生徒を相手に十二湖のブナ林モニタリング調査の企画と指導を始めました。同じ年に弘前市で世界遺産会議というものが開催されたことがきっかけです。この調査は自分が責任をもてる年数を目標に継続させようと思い、期間を30年と決めました。調査区は地滑りからなるブナの自然林に設定し、生徒たちを連れて月に一回毎木調査、落下物を測るリタートラップの設置、気温、湿度、地温などの記録を続け、平成26年には岩崎中が環境省の「みどりの日」自然環境功労者として環境大臣表彰を受けました。 惜しまれつつも岩崎中は令和3年に閉校しましたが、現在もモニタリングは続けています。


Q.どうして子どもたちとモニタリング調査をしようと思ったのですか?


白神山地には色んな人が関わっていて、それぞれ色んなアプローチがあるじゃないですか。例えばガイドだったり、写真を撮りに来たり、絵を描きに来たりとか。その中で私としては子どもたちに、「サイエンスというメガネで森を見る」ということを伝えたかったんですよね。エコロジーという学問に身を置いてきた私ですが、一時は教師を目指していたこともあり、「子どもたちの未来に何かできることを」という思いで取り組んでいました。


Q.子どもたちとの調査で楽しかったこと、大変だったことを教えてください。


モニタリングの年数が経つにつれ、ハラハラする気持ちが大きくなりました。時代の流れとともに年々野外に慣れていない子どもたちが増えていくようで・・・。危ないことが起きないように、調査が始まる前の説明会はかなり入念に行っていました。

楽しかったのは自分の息子たちと調査に入れたことかな。長年続けてきたことを見せることができ、良い思い出です。


Q.ズバリ、白神山地のオススメなところは?


十二湖は学術的な価値も高いです。青池を始めとする景観と、白神山地を特徴づける地滑り地形や豊かな生態系をパッケージとして見ることができる。それでいて国道からすぐそばとアクセスがいい。

また、白神山地は全国屈指の星空観察スポットでもあるんです。私が会長をしていた「岩崎エコクラブ」と地元の子どもたちが一緒に星空観察をし、その結果を「全国星空継続観察」に提出したところ、全国で最も星空観察に適した地に選定されました。夜の十二湖はまるで暗黒ですから、星が一際輝いて見える条件が整っているんですよ。



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 山本昌子  撮影/小田桐啓太)