「しらかみな人」とつながるインタビュー 昌子の いつか白神でフォークダンスを。

第9回目 古川 広志さん 企業組合広福丸 代表理事

「夢は漁師のワンダーランド!」


国道101号線沿いにあるにぎやかな店、その名も「漁師のおやつ屋さん」&「漁師カフェ綱小屋」。地元で獲れた海産物を使って一風変わったシーフードメニューを提供する古川さんにこの場所で開店したきっかけやこだわりのメニューについてお聞きしました。


Q.商売を始めるきっかけは?


2007年の7月にオープンして、それまではただの漁師だった。そこそこ暮らすだけの稼ぎはあったけれど、だんだん魚、獲れなくなってきてさ。出稼ぎに行く人もいたんだけど出来れば漁をしながら出来る事をしようという訳で最初は直売所をやる予定だったのさ。でもその頃漁師が魚を直接売るというのは暗黙の了解でご法度みたいな風潮があった。それならまず、おやつだったら何とかなるんじゃねえかと。ただフライにしてもいいし、まずはそこから始めようという訳でそれを5年ぐらい続けた。5年目には法人化して、水産加工の機械も入れて、今年でトータル10年目になるんですよ。


Q.商品開発で工夫していることはありますか?


「まずは柱となるオリジナルのものがないと駄目だって。ソフトクリームもオリジナルでないと駄目だ。それで『しおさいソフト』っていう日本海の塩を使ったものを考えたら、意外と評判良くてずっと今まで来てますよ。とにかく特殊かオリジナルなお店でないと誰も面白いと思ってもらえないから。観光地なら普通にやっていればある程度売れるんだろうけど、ここは観光地でも何でもないじゃん。だから、ここでしか食べられないものを出せればと思っている。加工品の方だと、『てってのとも和え味噌』は面白いな。『てって』はこのあたりでウマヅラハギというカワハギのこと。カワハギは食べ方を教えて初めて「美味しかった」っていうお客様もいる。だからその食べ方を教えられたら、という訳で商品にしようと考えたんだけど、独自でやってもどうしても商品にできなくて。県の水産研究所に通って4年目くらいでようやく商品化できた。全国見ても肝で作った商品は無いよ。肝自体なかなか手に入らないし、悪くなりやすい。珍しいものだからほとんど宣伝しなくても結構固定客がついてなかなか売れているんだ。」


Q.今後の目標をお聞かせください。


一昨年あたりから、鮮魚販売の方も徐々に始めた。意外と始めたら、なんにも喋られる訳でもなく、どんどんやって下さいと言われたりもした。なんだ、もっと早くやれば良かったと。時代もそう代わってきたんだと思ったよ。だからみんなもやれば良いと思った。おやつ系は手間がかかるからたぶんなかなかできないと思うけど、自分で取ってきた魚をさ、ここに持って来て売れば良いと思うんだ。地元の美味しい魚をもっと美味しく食べてもらいたいなと思うからさ。小さい魚は船一杯獲れたとしても売れずに全部捨てるけれど、手間でも一個一個刺身にしたら結構美味いわけよ。だから魚裁きの動画を作って若い人に教えたり、漁船に乗せて魚を釣って食べさせる体験型観光みたいなことも将来的には良いかなと思う。夢はどこにも無いような産直施設を作ること。できれば子供たちが遊べるような、おっきい漁船を置きたい。梯子をかけて乗り込むような。漁師のワンダーランド、それがおらの最終目標なんですよ。


―おやつ屋さんから始まったストーリーがどんな展開になるのか目が離せませんね!



(取材・文・編集/白神山地ビジターセンター 山本昌子  撮影/小田桐啓太)